空と君が泣いてる



空と君が泣いてる

雨男。
直江の傍に居るあの豪腕の男が晴れ男ならば、さしずめ自分は雨男。
外出の予定があるたび雨が降る訳ではない。
それならば雨男ではないではないかと、そう言われそうだがそうではなくて。
雨は人の気を沈ませる。
自分も一度口を開けば人を不快にさせる。

よく、似ている。

人を楽しませる術を知らない。
取り繕うのが苦手だから本音をもらす。
口を付く語彙が少ないからキツイ言い方になる。
それを、良いと思える人物は中々いない。
「三成…!」
笑みを浮かべるこの男。
自分のことを疎ましいと思ってはいないだろうかと、ふと時々考えることがある。
にこにこと、笑いながら声をかけてくれるのだ。自分が笑わない分、よく笑う。

憧れていた。

『上杉家に直江兼続あり』
そう謳われた男を目の当たりにして、最初はなんと優男かと思った。
だが、語り合ううちにその理想の高さに感服した。
嗚呼、この男は自分と同じ年でありながら、なんと崇高な人物か。
そう、最初は憧れていた。憧れが恋に変わるのに時間が必要だろうか。
奇特にもこの男は声をかけてくれる。文を送れば文をかきつけてくれる。
だが、この男は少し博愛主義過ぎた。
それが少し不安であった。
こんなにも良くしてくれるのはあの男が優しいからで、別に自分などただ太閤の部下程度にしか思われていないのではないかと、不安だった。

「兼続、どうしたのだ急に」
「何、景勝様が京へいらっしゃるのでな。ついにでに寄ってみたのだ。邪魔だったか?」
ついでに、と言った相手の言葉に少しだけ敏感になる。
直江の地位を考えれば、そう好き勝手動き回れる者でないことなのもわかっている。それは自分とて同じことなのだから。

しとしとと、先程まで晴れていた空がどんよりとした雲に覆われて、今にも雨が降り出しそうな天気になる。
気づけば、いつの間にか雨が降っていた。
直江が後ろを振り返り、不思議そうに眺めていたが石田はただ自嘲気味に笑った。
「邪魔な訳がない。よく来たな」

本当に自分は雨男だと、
涙を流す代わりに、雨が降る。
そう思えば雨も少しは





FIN.
060816
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