衝動的
ちょっとした事だとわかっている。 たかが手が触れ合っただけで緊張してしまうだなんて、どうにかしている。 「あぁ、すまない三成」 にこりと笑う相手に他意はないのだと、わかっていても自分の気持ちをどうにかすることなど出来る筈がない。触れ合った手を思わず握ると、そこにどんどん熱が篭っていくのがわかる。 離すところであって握るところではないと言いたげな灰色の瞳も、見つめるだけで胸が裂けそうなくらいドキドキして仕方が無い。 「三成…?どうかしたのか」 嗚呼もう今はただ、何も考えられなくて。握った手に力を込めることしか出来ない。 緊張のあまりガタガタと身体は震え出すし、こんなに自分は情けない男だったかと思ったその時ふと、顔が近くなる。 なんだなんだと、焦ってみるが確実に熱が顔面に集まって来るのがわかる。 直江と確かに触れ合っている。肌触りが良く暑さからかしっとりと濡れていて、それでいて何処か柔らかい。 「か、兼続…!何をする。恥と言うものが無いのか…!こ、こんな…こんな額を合わせるなどふしだらな!!!」 「しかし三成、私は熱を計ろうとしただけで。慶次がよくやってくれるものだから普通のことだと思っていたのだが」 「な、何!?兼続お前、前田慶次といつもこんなことをしているのか!!兼続お前は…お前は嫁入り前だと言うのに」 手に触れただけで慌てていたのが嘘かのように、石田は直江の肩を掴んでガクガクと揺さ振る。所々おかしな発言があっても直江には振動でよく聞こえていない。 「みっ三成…!三成…離さんか。目が回る」 ふらふらとしながら直江がガッシリと石田の腕を掴む。自らの腕に集まってくる熱に、石田は思わず直江の手を振り払った。 「す、すまない兼続…俺は…俺は………ウオァアア左近、左近はおらぬか!!!!」 それから今しばらく茫然として、石田は勢いよく走り出す。取り残された直江は何がなんだかわからず、ただ石田の後ろ姿を見送っていた。 「なんだ…三成は腹でも減ったのか」 呑気に構えている直江とは対称に、探し出された左近は石田の羞恥心と自己嫌悪の八つ当たり相手になったのは、まぁ…いつものこと。 FIN 060722 |